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歴史をたどる!志摩市の城址特集

城址の写真

城址は聞き慣れない言葉ですが、土台や石垣など何らかの遺構が残っている城趾のことを城址といいます。かつて国内には2万~3万ほどの城が存在していたと言われており、志摩市にも各地に城址があります。
志摩の海と山に囲まれた地には実はいくつもの城址があり、戦国時代に活躍した九鬼水軍(くきすいぐん)を率いた九鬼嘉隆や志摩に勢力を持つ志摩十三人衆と関わりのある城址があります。本特集では今も城址の名残が残る地形や歴史に触れつつ志摩市の城址をご紹介します!

※「城址」「城跡」の表記について
当特集内では遺構が残っているものを「城址」、残っていないものを「城跡」として標記しております

志摩十三人衆と九鬼水軍

志摩市と聞くと美しい海や自然を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、かつてこの地にはお城が点在していました。志摩地域で勢力を持っていた13人の地頭(じとう)集団「志摩十三人衆」や戦国時代に活躍した志摩国の水軍「九鬼水軍」などが、それぞれ居城を構えていました。

安乗城(畔乗城)

安乗城(畔乗城)
安乗城(畔乗城)
安乗城(畔乗城)

安乗城(畔乗城)は志摩市の安乗神社境内に位置する標高約25mの丘城で、戦国時代に三浦新介(国府内膳)によって築かれたといわれています。
三浦新介は志摩十三人衆の一人で、伊勢国司(伊勢を治める役人)である北畠氏の家臣です。関ヶ原の戦いでは志摩国鳥羽藩主の九鬼守隆が、安乗城を一時的に本拠としていました。
北側から湾の入り口を見渡せるため海上交通上で重要な拠点だった可能性があります。お城の遺構は神社の真裏の山中に僅かに残る土塁のみです。立ち入りはできない場所にあるのでご注意ください。

おすすめポイント

安乗城(畔乗城)

安乗城址のある安乗神社境内では毎月9月に安乗人形芝居が行われます。安乗人形芝居は400年以上の歴史がある伝統芸能で、地元有志による演技は必見です。
安乗人形芝居は志摩国の領主である九鬼守隆が、安乗神社にお礼参りした時、村人に人形芝居を許可したことが始まりだと伝えられています。境内には鳥羽藩主が納めた市指定有形文化財の鉄製の砲身もあり、こちらも見どころです。

Information

住所 三重県志摩市阿児町安乗844
電話番号 安乗神社
0599-47-3423
営業時間 9:30~16:30
アクセス 【公共交通機関】
近鉄鵜方駅から安乗行きバスで約20分「安乗」下車 徒歩約20分。または「安乗埼灯台口」下車 徒歩約10分
【車】
第二伊勢道路白木ICから国道167号・県道514号を経由 約30分
駐車場 なし

国府城(こうじょう)

国府城(こうじょう)
国府城(こうじょう)
国府城(こうじょう)

国府城(こうじょう)は戦国時代に志摩地頭十三人衆の一人・三浦新介(国府内膳)によって築かれた標高約20mの丘城。海に面した志摩市の城では珍しい構造をしており、複数の土塁で主郭(城で重要な平地)を囲んでいます。
現在も北・西・南の三方に土塁が残っており、城址には三浦稲荷大明神が祀られ、静かな雰囲気の中に歴史の息吹を感じられます。説明板も設置されており、国府城の歴史を学ぶこともできますよ。
城址へは、国府小学校を通り過ぎると赤い鳥居が見える丘があるため、こちらを登っていきます。

おすすめポイント

安乗城(畔乗城)

見どころは城の面影を感じさせる三方向に現存する土塁です。国府城址から少し離れた場所にある国府神社には、城主の三浦新介の墓所があります。
国府城址には桜が並んでいるため、桜の開花時期に訪れるとより景色が楽しめますよ。

Information

住所 三重県志摩市阿児町国府
アクセス 【公共交通機関】
近鉄鵜方駅から安乗行きバスで約10分「ゴルフ場前下車」 徒歩約5分。または「国府神社前下車」 徒歩約10分。
【車】
第二伊勢道路白木ICから国道167号・県道514号を経由 約25分
駐車場 なし

里中城

里中城
里中城
里中城

里中城は英虞湾北東奥の里中地区を見下ろす丘陵先端に築かれた城です。城の規模は東西約35m、南北約75mと小規模ですが、神明の町を見下ろす高台に位置しています。
里中城の築城時期や城主は明らかではありませんが、甲賀城主・武田左馬之助の出城(本城の外に築かれた城)だったと伝わっています。現在は墓地や山林となっており、遺構は確認できません。
城跡の場所の向かいには、昌禅寺があります。

Information

住所 三重県志摩市阿児町神明80
アクセス 【公共交通機関】
近鉄志摩神明駅 徒歩約12分
【車】
第二伊勢道路白木ICから国道167号経由 約25分
駐車場 なし

甲賀城

甲賀城
甲賀城
甲賀城

甲賀城は国府白浜の南方に築かれていたと伝わる城です。
太平洋に突き出た細長い岬という立地のため、現在は波食により遺構は確認できませんが、甲賀漁港に残る1本の木が、かつて城があった場所ともいわれているそうです。
※関係者以外立ち入り禁止エリアもありますので、該当エリアには立ち入らないようご留意ください
城主は志摩十三人衆の一人である武田左馬介と伝えられています。
城や城主について謎が多いですが、武田信玄により甲斐から追放された武田信虎が領民の世話になり、武田左馬介に武田の姓を与えたと言われています。甲賀集落にある見宗寺の入口には「甲賀城址」と刻まれた石碑が立ち、かつての城の存在を静かに伝えています。

おすすめポイント

甲賀城址
甲賀城址

見宗寺の入口の「甲賀城址」の石碑を訪れるのがおすすめです。
城の遺構は残っていないものの、岩礁地形や周辺の風景から、かつての城の面影を想像できます。 漁港周辺ののどかな景色とあわせて、志摩の歴史をたどるスポットとして気軽に訪れてみてください。

Information

住所 三重県志摩市阿児町甲賀
アクセス 【公共交通機関】
近鉄鵜方駅から志島循環バスで約25分「甲賀」下車 徒歩約5分
【車】
第二伊勢道路白木ICから国道167号・県道514号を経由 約30分
駐車場 なし

波切城

波切城
波切城
波切城

波切城は大王埼灯台がある大王崎岬一帯に築かれていた海辺の丘城。
九鬼氏の4代当主「九鬼隆良」が築いた波切城に明確な遺構は残っていませんが、「波切九鬼城址」の石碑が立っている八幡さん公園には城址を思わせる土塁のような地形があります。
近くの仙遊寺には九鬼一族のお墓が現存しており、八幡さん公園と合わせて見回れば歴史を感じられますよ。

おすすめポイント

まずは八幡さん公園を訪れるのがおすすめ。
公園へ続く階段の途中には「波切九鬼城址」の碑が経っており、頂上の公園は海の景色が広がっているので見晴らしも良好です。すぐ近くにある大王埼灯台も見どころの一つ。自然と歴史が融合した波切の町で、散策しながら戦国時代に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

Information

住所 三重県志摩市大王町波切52
アクセス 【公共交通機関】
近鉄鵜方駅から御座方面行きバスで約20分「大王埼灯台」下車 徒歩20分
【車】
第二伊勢道路白木ICから国道167号経由で33分
駐車場 周辺に有料駐車場(普通乗用車1回300円)あり

和具城

和具城
和具城
和具城

和具城は志摩十三人衆の一人である和具(青山)豊前の居城。
和具豊前は越賀城主と協力し、志摩を統一しようとした九鬼氏に対抗した歴史があります。和具豊前は戦後に九鬼家に仕え、数々の戦で活躍したとされます。
現在は雑木に覆われ土塁が僅かに残っているだけですが、主郭周辺の畑や宅地なども城地であったといわれ、元々は広大な土地を持ったお城であった可能性があります。周囲には民家が建ち並んでいるため、訪れる際は住民に配慮し、歴史の面影をたどってみてください。

おすすめポイント

和具城址で注目したいのは、断崖絶壁に囲まれた自然の地形を活かした地形です。
今も残っている石塁が当時の堅固な造りを想像させます。西の断崖には城の守り神として祀られていた明神の小祠が残っており、地域の信仰が今なお息づいていることを感じられます。
見張り所の役割を果たしていた東側の丘は「遠目(とめ)の丘」と呼ばれ、和具の町並みを見渡すことができ、見張り台にいるような気分に。

Information

住所 三重県志摩市志摩町和具字城山
アクセス 【公共交通機関】
近鉄鵜方駅から御座方面行きバスで約50分「和具」下車 徒歩5分
【車】
第二伊勢道路白木ICから国道260号経由 約45分
駐車場 なし

越賀城

越賀城
越賀城
越賀城

越賀城は越賀集落の中央から太平洋に突き出た城山岬に築かれた丘城。 城主は越賀隼人で志摩十三人衆の中では和具豊前に並ぶ勢力を誇り、和具豊前と共に九鬼嘉隆と戦いました。越賀城は九鬼氏との戦いで落城し、現在は岬頂部には土塁で囲まれた方形郭が残っています。 入口は民家裏手から山道を登る形になりますが、歴史の面影を感じながら、志摩の水軍文化にふれるひとときを過ごせます。

おすすめポイント

越賀城
越賀城

越賀城址の見どころは、三方を海に囲まれた岬の頂上という水軍の城に適した立地です。現在も土塁や方形郭が残り、戦国時代の志摩水軍の拠点だった雰囲気が感じられます。 越賀城址周辺には三重県指定史跡の「旧越賀村郷蔵」もあり、こちらも隠れた見どころとなっています。

Information

住所 三重県志摩市志摩町和具字城山
アクセス 【公共交通機関】
近鉄鵜方駅から御座方面行きバスで約50分「和具」下車 徒歩5分
【車】
第二伊勢道路白木ICから国道260号経由 約45分
駐車場 なし

志摩の城址から─歴史と風景にふれる旅の終わりに

志摩市に点在する城址は、かつての歴史や人々の営みを今に伝える大切な場所です。今回ご紹介した七つの城址はそれぞれに物語があり、志摩の知られざる一面に出会えます。中には遺構がほとんど残っていない場所もありますが、地形や周辺の地名から往時を想像するのも楽しみのひとつ。近くにお寺がある城址も多く、あわせて訪れるのもおすすめです。ただし、山中や民家の近くなど、危険を伴う場所や私有地に接する場合もあります。地域の方々への配慮と、安全第一での散策を心がけましょう。

掲載城址マップ

志摩を楽しむ